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ハロー!

             本日の銀姫 :  ハロー♪

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夕方、郵便受けを前にかばんをゴソゴソ。
聞きなれたチャリンチャリンというキーホルダーの音がしない。
家の鍵を忘れたようだ。
鍵というより、そのチャリンチャリンという音を探すよに
あきらめ悪く、かばんの底にまで手をはわしてみるが
やはり無いものは無く。


仕方なくアパートの入り口のテラスのベンチに腰をかけ
夫の帰りを待つ。

所在無く、暮れていく空を見上げる。

昼はまだ真夏といっていいほどの日差しがさしていたのに
夕暮れのこの時間の空の色には秋の気配がみえる。

朝早くや、夕暮れ時、時間の谷間のいっときに、
変わりはじめた季節の色が滲み出る。

こうして季節は少しづつ変わってく。

どこからか漂ってくる煮炊きの匂いや、路地を車が曲がる音、
急に走り出した子供のたてるペタペタとした足音と
それを追う母親の声。

賑やかなはずの佇まいが暮色の中に、とっぷり沈んでく。

ハロー!

ふいにあたりにひびく黄色い声。
周りを見回すが誰もいない。

戸惑いながら、あたりをうかがっていると、またハロー!の声。
その後につづく猫のような、赤ん坊の泣き声のような
ぎゃおぎゃおとした音。

声のする方向を耳で探りながら、テラスから身をのりだす。

オウムか九官鳥か。

まだ電灯の灯りもともっていない、うすぼんやりとした中で
目をこらす。
声のありかを探して。

そんなあたしをからかうように何度か響くハロー!の声。

何度目かのハロー!でようやくその声の出所に焦点があう。
向かいのアパートの、珍しくひさしがある窓の
その軒先に止まってる一羽の鳥。

黒いおぼろげなシルエットにしか見えないその姿。
オウムのようにも、九官鳥のようにも、カラスのようにも見えて。

おずおずとあたしも呼びかけてみる。

ハロー!

しきりにキョトキョトと首をかしげるシルエット。
でも返事はない。

ハロー!

もう一度、もう少し大きな声をかけてみる。

ますます首をかしげた影が、
いきなり大きく羽を広げて飛びたつ。
ギャオギャオギャオという声をひびかせながら。

一瞬にしてシルエットが点になり消えていく。

誰に呼びかけてたのだろう。
その言葉を教えたその人か。

飛び出したけれど、もどりたくなったのだろうか、
ハローと呼びかけられた籠の中に。

喉が切れそうな音でひびいたハローの言葉は
確かに誰かを探していたようで。

飛び立ってしまえば、もう二度と戻れない場所がある。

自由に生きるということは、寂しさを知るということなのだね。

夕暮れが夕闇にかわりはじめ、目をこらしても
鳥が飛び去った辺りにはもう何も見えない。

遠くでかすかにハローの声がもう一度聞こえた気がしたけど。









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日々つれづれ」カテゴリの記事

コメント

>自由に生きるということは、寂しさを知るということなのだね

今の私の気持ちにあまりにヒットしました。
 思ってました。ほんとに毎日孤独やなって。
 孤独でさみしくて、泣いてしまった今日でした。

投稿: かなりん | 2008年9月25日 (木) 20時48分

今日の日記はなんだか文学的ですねぇ~。
(って、作家先生に向かって何を言うてるのやら!!)

カラスも言葉を覚えるらしいですね。
「ワンワン!」と吠えているカラスを見たことがあります。

・・・で、家には無事に入られたのでしょう?
(入れたからBlog更新してるンやって!←自分への突っ込み)

投稿: estrella★ | 2008年9月25日 (木) 21時25分

秋の夜長に毎回読ませていただいてますが、今回はしっとり、大人なblogでしたね。素敵です。

投稿: ayaPod | 2008年9月25日 (木) 21時42分

詩てきな銀ママさん 

イイジャナイ! すてきheart

プラスに振れた分マイナスにも振れる。

人のココロ模様

それでよし それでよし

投稿: | 2008年9月25日 (木) 22時02分

自由を寂しさと引き換えに・・・
最近ねえ、私は一人で自由に生きてきたんやけど、
おかーんと一緒に2ヶ月暮らしてさああああ。。。
正直、お互いきついわ。寂しいほうがいいかも・・・

投稿: kyonko | 2008年9月25日 (木) 22時02分

 今日は宿直です。
 程々に酔って、そろそろ仮眠所へ、というところで・・・
 「ハロー」・・・
 上質の短編を、こっそり読ませていただいたような・・・
 ありがとうございました。
 そうなんです・・・
 確かに、そうなんです・・・。
 

投稿: かりがね | 2008年9月25日 (木) 22時04分

今夜、読み切った本の中で、
作家が小説や随筆を書けるのは、絶えず関心を持って周囲の景色や出来事を見ているからだ。とありました。
実は、この件でブログを!と思っていた矢先、
こちらのログを読ませていただきましたが、
作家であろうがなかろうが、
花鳥風月のこころを持ち、生活を営む。
う~む、あやかりた~いとしみじみ思わされました。

投稿: リンカ | 2008年9月26日 (金) 00時40分

素敵ですshine
すでに1つのストーリーがそこにあるみたいで
温かい想いになりました。

いつも車でせかせか動いてる日常にも
ふと立ち止まって腰を下ろしてみようかな・・・bud

投稿: ゆり | 2008年9月26日 (金) 07時48分

さすがな文体ですね。
ちょっとしたことを体で感じ取り、文章に出来ることが羨ましいです。

投稿: @ | 2008年9月26日 (金) 08時01分

すてきな情景が目の当たりに。
日常の風景なのにすてき。
こんな風に文章にできる銀ママさんさすがです。
私には無理~~っ。当たり前やっ。爆
ハローって言ってるのはカラスですね。
カラスは頭がいいから。

投稿: こむぎママ | 2008年9月26日 (金) 09時59分

う〜ん、一緒に横に座ってるような気分になりました。
時間がゆっくりながれる〜
せかせかしてる現実から一瞬で離れ
香港のベンチで日が暮れて行くのを鼻、目、耳で感じてました。

投稿: ぼれぼれ | 2008年9月26日 (金) 16時30分

秋の、この暮れそうで暮れない夕方の時間の谷間
すごく好きです。いいですねー。

むかぁし昔、20年ぐらい前に
南極に程近い白夜の町を旅したことがあるのですが
夜9時や10時になっても
秋の夕暮れ時のような空のままで
なんとも素敵だった記憶があります。
何時間も、何時間もあの黄昏の空が続き
ただただ、ウットリするばかりでした。

でも、
いつまでも暮れない夕方、、、より
銀ママさんが書いているように
気がつくと、あっという間に暗くなり
賑やかなはずの佇まいが暮色の中に、とっぷり沈んでく
そんな方が
日本人的には、いいなぁと思います。
なんとも刹那的で、甘く切ない感じがして。

秋、ですねぇ。


投稿: ニャカムラ | 2008年9月26日 (金) 16時50分

新作の始まりかと・・・・
ほんま、急に秋がやってきました。

投稿: リノン | 2008年9月26日 (金) 17時13分

さすがにプロです。黄昏の香港、うすぼんやりした気配が伝わってきました。
隠れファンだったのについコメいれてしまいました…

投稿: ラナ | 2008年9月26日 (金) 19時50分

さらさらと書きはるんでしょうね~
さすが作家さんです。
自由ってよく考えると、悲しいんですよね。
長いこと、旦那さんを待ったのですか?
待っている間に、こんな文が書けるなんてうらやましいです。

投稿: まりかず | 2008年9月26日 (金) 20時59分

そうなのよねぇ、自由も何もかもすべては手に入れられないのよねぇ。
この場で反応するのもなんやけど>kyonkoちゃん(笑)。
ようわかるよー。
私も、もしか香港におかーはんに来てもらうチョイスしてたら、今ごろ絶対もう気狂ってると思うわ。
実家だから逃げ場所あってほんま楽よ。。。。

投稿: kaori | 2008年9月26日 (金) 23時33分

言葉を覚えている鳥って、
鳥同士でそれを聞いたらどうなるんだろうと
子供のころ思っていました (^_^;)

もちろん他の鳥が発している言葉の意味を理解はしないでしょうけどね~。
わかったら恐いけど・・

読んでいると、その場面が浮かんできて
映画を見ているようでした。

投稿: ぷいぷいmama | 2008年9月27日 (土) 10時51分

やっぱり銀ママさんは、詩人だわ!(*^_^*)

銀ちゃんは、香港を代表するアイドルウサギね。(^_-)-☆

投稿: Coro | 2008年9月27日 (土) 14時31分

飛び立ってしまえば、もう二度と戻れないと覚悟して、自由に生きようとして寂しさを知ったとき、勇気を持って戻って来たら、笑顔で『おかえり』と言える器をね。
育てた雛は、心配をよそに、勝手にハロー!って言えるようになってるもんなのよ。

投稿: 殿下 | 2008年9月27日 (土) 16時43分

追記します。
あの頃より落ち着いたので。

すごく、素敵な叙情的な文章で、引き込まれました。

さりげないことも、逃がさない、観察力で文章化してしまうのは、さすがだと思いました。

なんていうか、銀ままんさんは、小説もいいんですけど、こういった情景を文章にする作業も向いてると
思います。

そんな本もありますよね。

投稿: かなりん | 2008年9月27日 (土) 22時36分

銀姫様は今日の写真?
優しい顔してるね。

投稿: 遥 | 2008年9月28日 (日) 11時45分

かなりんさん>私も自由な毎日ですが、それが反対にさびしく思えることが確かにありますね。
自由と孤独はとなりあわせなんでしょうか。

estrellaさん>やっぱりカラスだったんでしょうかね。
かなり大きな鳥でした。
ワンワンってほえるぐらいなら、ハローぐらいはお手の物? カラスって頭がええっていいますもんね。
家には無事に入れました(笑)

ayapodちゃん>大人~? おほほ。鍵忘れて、薄暗がりでハロー!と鳥に向かって語りかけるおばちゃん。 よう考えたら不気味よね(笑)

これはどなたでしょう? でもほめていただいてるので、ありがとうごじゃいます~(笑)
心の振幅は中間というのは中々ないかもしれません。 プラスかマイナスどちらかにいつもゆれています。

きょんこちゃん>そうなのね。まぁ、あたしなんか、うちのオカンが来たりしたら、3日もつかな~。我が家が戦場と化しそう(笑)

かりがねさん>そんな風に言って頂くとうれしいです。
ほんとに、こう黄昏時なんかは、普段はガハハのわたしも、珍しくしんみりしてしまったりするので、不思議です。

リンカさん>なんでしょう。日々の中で、急に心をとらえて離さないシーンとかが、たまにあります。
その時のちいちゃな点のような気持ちを何か形にしてみたくなるんですよね。それが私の場合は文章なのかもしれません。

ゆりさん>そんな風に読んでいただいて、うれしいです。
私も鍵を忘れるというアクシデントのお陰で、ゆったり、しんみりと空を見上げることができました。

@さん>あ!と心をつかまれることがたまにあり、そうなると、その時の自分の気持ちを忘れないように(すぐ忘れるんで(笑)文章にしてるような気がします。
実際、少し時間がたって読むと、へ~、こんなこと感じたのねと自分で思うことが(笑)

こむぎママさん>やっぱりカラスが有力!?
カラスだとしたら、かなりおっきかったです。
でも、頭がまるっちくって、尻尾が長かったような気もしたんですが。
テラスに遊びにきてくれないかな~。

ぼれぼれさん>なんだか、ゆったり、しんみりとしたひと時でした。
たまには鍵も忘れてみるもんですね(笑)

ニャカムラさん>わ~、それって北欧ですよね?いってみたいです~。オーロラが見てみたい~。
何がおいしいのでしょう?(え?また話しがうまうま?)
ヨーロッパやアメリカの夕暮れは壮大な感じがします。
アジアの夕暮れは湿度や温度が切ない感じのような・・・

リノン>新作!・・・・・あああああ、すすんでいませんのん。焦り中。もう秋やというのに(汗)

ラナさん>コメントありがとうございます。
香港の夕暮れは日本の夕暮れともまたちょっと違い湿度のある重い感じがします。
ゆるいプールの中にしずんでいくような。

まりかずさん>待ちぼうけのお陰で、しんみりするひと時ができました。
これぞ災いならぬ、あわてもの転じて福となるという感じでしょうか。
鍵をもっていたら、そのままスタスタ部屋に帰り、ハローの声にも気づかなかったでしょうし。

かおりん>そうなのよね、何もかもは手に入らないもんね。
あたしもうちのオカンが香港にきたら、きっと、3日で茶の間は戦場になると思うわ(笑)

ぷいぷいmamaさん>ほんとですね。鳥同士で人間の言葉でしゃべりあうってのも、すごい。
わたしのちいちゃい時からお世話になってる大阪の美容院には昔、九官鳥がいて、そこのお店で使ってるカ○ボウさんの営業さんが、カ○ボウです~といつもやってくるのを覚え、でも、その九官鳥くんのすごいところは、その営業さんがくると、彼が名乗る前に 「 カ○ボウさんですか? 」ってきくようになったんですよ。
すごくないですか? 銀ちゃんは、すごく性格悪そうなんで(笑)しゃべらないほうがいいかも(笑)

Coroさん>おほほ、ポエマーと名乗っちゃいましょうか。
銀ちゃん、確かにわがままで自分がいつも注目の的でないと気にいらないところはトップアイドルかも(笑)

殿下>これまた深いコメント。
笑顔で『お帰り』なぁ~。
年とともに、ますます身体も心もかたくなってくるのよね~。

かなりんさん>お、ちょっと落ち着かれたんですね。よかったです。
いつも見てるちょっとしたことが、その時の心情ですごく心にとまることがあります。
それを忘れないように(笑) 文章にしてるところもあるのかもしれません。
いつかこういう文章をまとめられる日がくれば、私もうれしいです~。

遥さん>姫は普段はフローリングの上を歩かないんですが、この写真の後ろのソファの横のお気に入りの場所にいくのには必死で歩いていきます。
その必死のところをちょんちょんとつついたら、なあに?と振り向いたところのショットです。


投稿: 銀ままん | 2008年9月28日 (日) 12時48分

又やってしまいましたか!
入れていたつもりでしたが・・・・

名無しは私でした。
すみません。

秋ですねーーー!
日常の中に、詩的なものを感じます。

投稿: Y子 | 2008年9月28日 (日) 13時13分

Y子さんだったんですね。
ハートマークに愛を感じてました♪
秋は詩人になっちゃいますよね。
美しい季節。
昔、源氏物語を読んだときに、源氏の君が
それぞれの宮に季節のお庭を造るというくだりで
断然、春がいいわ~と思ってましたが、
最近は秋がいいわ~と思います。 

投稿: 銀ままん | 2008年9月29日 (月) 18時34分

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